平版 へいはん

Planography

平版とは、凹凸のない平らな面を持った版を用いた版画の形式です。石や金属などの平滑な版面に絵を直接描き、水と油の反発作用を利用して刷るリトグラフは、この形式に属します。

版形式には凸版、凹版、平版、孔版の4つがあります。平版は他の版形式と異なり、版に「彫る」「腐食する」「穴をあける」などの物理的な処理を加えて凹凸を作るわけではなく、版面は文字通り平らなままです。版の上にはリトクレヨンや解墨(ラヴィー)などの油脂分を含んだ描画材で描いた後、化学的な製版処理を施し印刷を行います。そのため、はじめに描画したイメージが変わることなく版として表現できるのが特徴です。平版は1798年頃にドイツでアロイス・ゼネフェルダーが発明した石版印刷(リトグラフ)を基に、ガラスを用いることで微妙な階調表現が可能なコロタイプや、現在多くの印刷物に用いられているオフセット印刷などへと発展を遂げてきました。

基本的な原理と刷りの工程は、版面上を水で濡らした時に湿った状態を保つ親水性(保水性)の部分と、水を弾いて油分を引き付ける親油性の部分を製版によって作り出します。この相反する性質部分を持つ版面にローラーで油性インクを盛ると、親水性の部分ではインクが弾かれ付着せず、親油性の部分のみにインクは盛られます。このようにしてインクが盛られた版の上に紙を乗せて、専用のプレス機で圧力をかけることで転写します。またオフセット印刷は版面にインクを盛った後に一度ゴムローラー(ゴムブランケット)に転写、そのゴムローラーを紙に転がして印刷します。

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関連科目

参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学

監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2007年12月10日作成