凸版 とっぱん

Letterpress

凸版は、版画において、版面に凸面を持つ版を用いる版形式です。版面に作り出した凸部にインクを付着させ、上から圧をかけて紙に印刷します。彫刻刀を使用して凸面を作り出す板目木版、ビュランを使用する木口木版やリノリウムを用いるリノカット、活版印刷などはこの形式に属します。工業印刷において、欧米でパッケージ印刷の主流になりつつあるフレキソ印刷も凸版に属します。

版画には凸版、凹版、平版、孔版の4つの版形式があります。凸版は、他の版形式である凹版、平版、孔版と比べ、歴史的に最も古くから使用されています。特に木版画は数ある版画の中で最も古く、印刷技術として長く使用されてきました。現在、版を使用した最古の印刷物は、日本で8世紀につくられた木版による経文とされていますが、中国では、すでに7世紀から木版による印刷が始まっていたとされています。西洋では、14世紀後半より宗教画として木版画が行われていましたが、ルネサンス期にヨハネス・グーテンベルグが金属活版印刷を発明したことで、急速に印刷技術が発展することになりました。

凸版の基本的な製版の工程としては、版として必要な部分(描画部)を残し、それ以外の不要な部分(非描画部分)は、彫刻刀を使用して彫るなどの物理的処理を加えて、凸部を作り出します。このようにしてできた凸部に、絵具などの水性インクや油性インクをのせて紙を置き、バレンやプレス機などで圧力をかけてインクを刷りとります。また、工業印刷であるフレキソ印刷は、版が樹脂やゴムを使用した円筒形のローラーになっており、写真製版やレーザー彫刻などによって製版が行われます。版のローラーの他にインクを充填するローラーが付属されていることで凸部にインクを充填し、版と紙を圧着して印刷を行います。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年 
・「版画史解剖」黒崎彰/著 阿部出版 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年

参考ウェブサイト
日本フレキソ技術協会

監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2008年07月18日作成