デカルコマニー でかるこまにー
Decalcomania
分類
デカルコマニー(décalcomanie:仏)は、紙と紙などの間に絵具を挟み込み、その上から圧力をかけることで、絵具は押しつぶされて広がり、作者の意図しない偶発的な形態を得ることができる技法です。フランス語の「décalguer(転写する)」に由来します。
紙を用いたデカルコマニーには、2つ折りした紙の間に絵具を挟み、再び開く方法や、アクリル板や紙面上に絵具をのせ、その上から別の紙を押し当てるなどの方法があります。紙を2つ折りにする方法によりできあがる形態は、折り線を中心に左右対称になります。デカルコマニーでは、使用する紙や絵具などの素材特性が大きく表現効果に関わります。紙には、表面の平滑性や吸収性などが異なった様々な種類のものがあり、それぞれ特徴のある転写効果を生みますが、基本的には、水分が染み込みにくく、表面が比較的滑らかなケント紙やアート紙などが適しています。絵具は、水彩絵具やアクリル絵具などの水性絵具が適しています。チューブから直接出したような粘度のある絵具を用いると、デカルコマニー独特の皺やまだらな模様ができやすくなり、また、水などの混合具合でも様々な表情を得ることができます。紙を押し当てる際は、バレンや手の平で圧力を加えていきますが、この時の力のいれ具合や方法により、絵具の形状なども変化します。また、紙を剥がす際は、ゆっくりと徐々に剥がしましょう。ちなみに、キャンバス上に油絵具をのせ、アクリル板などを押し当てて剥がすことで、デカルコマニーの表現効果を作ることができます。
元々は紙に描いた絵を、陶器やガラスに転写し絵付けするための技法でしたが、画家のオスカー・ドミンゲスがこの技法を絵画作品に取り入れました。デカルコマニーによるイメージは、制作者のコントロールや意識に関係なく偶然性にゆだねられます。その偶然や無意識により現れたイメージは、見る者の想像力を拡大させる効果があるとし、シュールリアリストの画家達の間には、フロッタージュなどと共に、オートマティスムの一つの手法として広まりました。特に、マックス・エルンストによる作品は有名です。
作業上の注意として、デカルコマニーは絵具が固化する前に行なう必要がありますので、アクリル絵具など乾きの早い絵具を用いる際は、手早く作業を進めましょう。
関連科目
参考文献
・「日本大百科全書」小学館 1994年
・「岩波西洋美術用語辞典」岩波書店 2005年
・「新潮世界美術辞典」新潮社 1985年
監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年03月10日作成