カギ見当・引き付け見当 かぎけんとう・ひきつけけんとう
Kagi Kento and Hikitsuke Kento
カギ見当・引き付け見当は、板目木版の制作において摺りの際に紙を正確な場所に置くための目印として、版木に彫り込むカギ型と一文字型の見当のことです。
カギ見当は、版木の右側の下部に彫られる“L”型(カギ型)の見当のことを指し、引き付け見当は、カギ見当から左側の紙の余白部分を含めた2/3程度の位置に彫られる “-”型(一文字型)の見当のことを指します。摺りの際に、両手の人差し指と中指を使って紙を挟み持ち、右手で持った紙の右端の角をカギ見当に引っかけて親指で押さえ、左手で持った紙の底部を引きつけ見当に引っかけて、親指で押さえながら、紙を静かに版に落として摺りを行います。このようにカギ見当と引き付け見当を使用することで、紙を正しい位置に置くことができ、多版を使用する場合にも色ズレ、版ズレを防ぐことができます。
見当を彫る際には、まず、作品のイメージサイズと余白(マルジュ)を計算し、版木に直接書き込みます。余白の外側につける見当が、版木の内部で収まりそうな場合、右下にカギ見当の彫る位置を、左下に引き付け見当の彫る位置を直接版木に書き込みます。このように作品を彫る版木の中に見当をつけることを内見当と呼びます。また、版木の大きさをそのままイメージサイズにする場合には、版木と同じ厚さの木板を用意し、そこに見当を彫るようにします。この板は見当板と呼ばれ、この見当板を使う方法を外見当と呼びます。印を付けられた見当は、見当ノミと呼ばれる道具を使用して版木に対して垂直に切り込みを入れます。見当ノミがない場合には、カッターを代用します。切り込みを入れた見当は、平刀を使用し、ゆるい傾斜をつけ、紙が引っ掛かる程度の深さまで彫り下げます。
この時、彫られたカギ見当が直角でなかったり、引き付け見当がカギ見当の底部の延長線上からずれていたりする場合、多色の版を重ねたときに、色ずれが起きてしまうことがあるために、気をつけて見当を彫るように心掛けましょう。
一般的にカギ見当が右側、引き付け見当は左側とされていますが、左利きの場合見当を逆につける場合もあります。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2009年03月17日作成